新年あけましておめでとうございます。
趣味グラマのNobu(@nm_aru)です。
コロナ禍は落ち着くどころか、悪化の一途といった感じですが、個人としてはやる事を粛々とやっていこうと感じている2021年です。
そして、新年早々から偉そうなタイトルですが、この数年何度か思う事があり、せっかくなので記事にしておこうかなと。
決算書を読めると言っても、簿記◯級の知識が必要とか、自分で勘定科目の仕訳が出来るようにとか、そこまでの知識は全くもって不要なので、気軽に読んで貰えればと思います。(私自身も出来ません)
エンジニアが決算書を読める事で得られるメリット
エンジニアが決算書を読める事で、どのようなメリットがあるかと言うと、ざっとこんな感じです。
- 新規事業に参加する時に、会話の幅が広がる
- 競合企業が上場企業の場合、事業の状況を把握できる
- 業務委託の人を雇う時に、事業の業績にどのような影響を与えるか分かる
- 自身の役職が上がった時に、経営層と会話が成り立つ
- 転職検討時に、上場企業であれば事前に会社の実態を把握出来る
- 株式投資等で役に立つ
沢山ありますね(笑)
1〜3については、所属している会社で直接役に立つ事ですし、4については人それぞれですが、管理職等になっていく場合は結構必須の知識だったりします。
5については、一人あたりの売上高や営業利益率等を知る事で、その企業の報酬の上限が何となく見えますし、面接時に決算書の内容に関連した質問ができると、相手から「お、こいつ良く調べてるな」と思って貰える場合があります。
6は趣味の世界ですが、知っておいて損は無いですね。
決算書を読むにあたって、知っておいた方が良い知識
決算書と言っても、それ一つで専門家が居るぐらいの分野になるので、深く広く知る事は中々難しいです。
しかし、最初に書いたように、簿記の資格を取るとかでなければ、知っておいた方が良い知識は、大した量ではありません。
そこで、まずは知っておいた方が良い知識をざっと解説します。
小難しい言葉が並びますが、再現条件が不明のバグ対応に挑む時と比べれば、気楽なものだと思います(多分)
まずは財務諸表の種類
財務諸表=決算書と思って貰って良いのですが、「諸表」と言うように、いくつか種類があります。
名前 | 略称 | 説明 |
貸借対照表 | BS、B/S | 英語だとbalance sheetと書きます。作成時点での企業の財務状況(資産、負債、純資産)が分かる資料です。 |
損益計算書 | PL、P/L | 英語だとprofit and loss statement(米国だとincome statement)と書きます。特定期間の収益と費用が分かる資料です。 |
キャッシュフロー計算書 | CF、C/F、C/S | 英語だとcash flow statementと書きます。特定期間の現金の増減が分かる資料です。営業活動・投資活動・財務活動の3種類に分けて記載されます。 |
偉い人がBSやPLと言った場合は、貸借対照表、損益計算書の事を指しています。
キャッシュフロー計算書は、上場企業の場合は作成が義務ですが、スタートアップや中小企業の場合は任意になるため、作成していない企業もあります。
貸借対照表(BS)で見るべきポイント
資産 | 負債 |
---|---|
流動資産 | 流動負債 |
現金・預金 |
短期借入金 |
・・・ |
・・・ |
固定資産 | 固定負債 |
・・・ | ・・・ |
・・・ | 純資産 |
・・・ | ・・・ |
・・・ | 利益剰余金 |
・・・ | ・・・ |
合計 ◯◯◯円 | 合計 ◯◯◯円 |
雑に貸借対照表(以下BS)を書くとこんな表になります。
貸借対照表がなぜBalance Sheet(バランスシート)と呼ばれるかと言うと、右側(負債+純資産)の合計金額と、左側(資産)の合計金額が一致する(均衡する=バランスする)からです。
そして、右側は会社がお金をどうやって調達してきたかを表現しており、左側は調達してきたお金を何に使っているかを表現しています。
実物を見ると、この表とは比べ物にならないぐらい色んな項目が書いてありますが、私がいつも見るポイントだけ説明します。
見るべきポイント | 内容 |
---|---|
現金・預金 | その会社が、今いくらの現金を持っているのかが分かります。 企業が倒産するのは赤字の時ではなく、現金が無くなった時なので、 売上高や利益に比べて、保有現金が少な過ぎないかを見ます。 |
短期借入金 | 1年以内に返済しないといけない借金になります。 利益に対して短期借入金が多すぎないかを見ます。 |
流動比率 |
「流動資産 ÷ 流動負債 x 100」という計算式で出ます。 要は負債を資産でどれだけカバー出来るかが判断出来ます。業界にもよりますが、100%以上は欲しいところです。 |
利益剰余金 |
企業が過去に積み上げてきた利益の合計額になります。 ここがマイナスかつマイナス額が増加傾向の場合、その企業は全く儲かっていないという事になります。 |
自己資本比率 |
「純資産 ÷ 総資産(負債+純資産) x 100」という計算式で出ます。 右側の調達してきた資金のうち、返さなくても良い資金の割合が分かります。当然、高いに越したことはありません。 |
余談ですが、利益剰余金の事を内部留保と呼びます。そして一昔前に、某政党が企業は内部留保を貯め込んでいる!労働者に還元せよ!と怒っていた時期がありました。(本心かは不明ですが)
しかし、BSの仕組みから考えれば、右側にある利益剰余金は、資金の調達元を書いてあるだけであり、実際にその金額を貯め込んでいる訳ではない事が分かります。
その企業が、どれぐらい貯め込んでいるかは、左側の現金・預金を見る必要があるという事ですね。
損益計算書(PL)で見るべきポイント
売上高 |
売上原価 |
売上総利益 |
販売費及び一般管理費 |
営業利益 |
営業外費用 |
経常利益 |
特別利益 |
特別損失 |
税引き前当期純利益 |
法人税等 |
当期純利益 |
またまた雑に損益計算書(以下PL)を書くとこんな表になります。
その期(四半期や通期)で、会社がどれぐらい売上げて、どれぐらい費用を使って、どれぐらい利益が残ったのかが分かるものです。
BSと比べて、PLは見るべきポイントが少ないです。
見るべきポイント | 内容 |
---|---|
売上高 |
売上高がどれぐらいなのか見ます。そのままですね(笑) |
営業利益 |
本業で儲かっているかどうかを表す利益になるので、ここがマイナスの場合は要注意です。 ただし、設備投資を積極的に行っていて減価償却費が大きい場合は、営業利益がその分減少して見える場合もあるので、その点は注意が必要です。 |
当期純利益 |
法人税等も払った後、最終的にいくら残ったのかですね。 これもそのままです。 |
キャッシュフロー計算書(CF)で見るべきポイント
営業活動によるキャッシュフロー |
・・・ |
投資活動によるキャッシュフロー |
・・・ |
財務活動によるキャッシュフロー |
・・・ |
最後にキャッシュフロー計算書(以下CF)を書くとこんな表になります。
CFは、企業の現金の流れ(キャッシュフロー)が分かる資料になります。
なぜ現金の流れが分かる資料が必要かと言うと、黒字倒産という言葉があるように、PL上の利益額だけでは、その企業の実態が分からない場合があるためです。
CFで見るべきところも、BSに比べたら少ないです。
見るべきポイント | 内容 |
---|---|
営業活動CF |
営業活動CFは、本業で現金を稼げているかを判断できる指標のため、数値がプラスになっている事が望ましいです。 PLで純利益が出ていても、営業活動CFがマイナスの場合、本業では現金を増やす事が出来なかったという事になります。 |
投資活動CF |
投資活動CFは、固定資産の売買など設備投資に関する現金の流れを把握するための指標です。 元気な企業は当然設備投資も活発になるため、投資活動CFはマイナスになっている事が望ましいです。 |
フリーキャッシュフロー(FCF) |
「営業活動CF – 投資活動CF = FCF」という計算式で出ます。 FCFは、本業で稼ぎ出したお金(営業活動CF)から、事業継続のための設備投資額等(投資活動CF)を差し引いて、最終的に手元に残った現金の事になります。 当然プラスになる方が望ましいです。 |
その他知っておいた方が良い知識
その他、いくつか知っておいた方がより役立つ事について解説します。
EBITDA(イービットディエー、イービッダ)
PLの営業利益は本業の利益ではあるのですが、上でも書いたように減価償却費の影響を受けてしまい、実際の利益の大きさを表さない時があります。
そこで、減価償却費の影響を除いた利益が知りたい時に使うのがEBITDAです。
EBITDAは「Earnings Before Interest Taxes, Depreciation, and Amortization」の頭文字を取ったもので、
- Earnings・・・当期純利益
- Before・・・〜の前
- Before Interest Taxes・・・利子、税金
- Depreciation・・・有形固定資産の減価償却費
- Amortization・・・無形固定資産の減価償却費
という意味になります(意味分からないですよね)
利子、税金、有形・無形資産の減価償却費を払う前の利益…つまり(?)、当期純利益に、支払った利子や税金、その期に現金が動いた訳ではない減価償却費を足したものをEBITDAと呼ぶ訳です。
なぜEBITDAが必要になるかと言うと
- 金利や税率、減価償却のルールは国ごとに異なる場合がある
- 減価償却の方法がは業界や企業によって異なる場合がある(操作する事も可能)
といった面があり、企業の本当の力(現金を稼ぐ力)を測るためには、一定の共通軸が必要だからです。
EBITDAは、以下の計算式で簡単に出す事ができます。
PLの営業利益 + 営業活動CFの減価償却費 = EBITDA
限界利益、限界利益率
営業担当と会話したり、サービスの価格を検討する時に「限界利益」という言葉が出てくる事があります。限界利益は、以下の計算式で出す事ができます。
売上高 – 変動費 = 限界利益
突然「変動費」という単語が出てきましたが、会社が使う費用には、大きく「固定費」と「変動費」の二種類があり、それぞれ以下の内容になります。
固定費
オフィス家賃や社員の人件費等、売上に関わらず常に一定かかる費用
変動費
仕入れ代金や外注費等、売上の増減に連動して、同じように増減する費用
限界利益は売上高から変動費を引いた額になるので、この残った額の中から固定費を支払う必要があります。
つまり、限界利益が多ければ多いほど、固定費の支払いに使える金額が多くなる(固定費を早く回収できる)事になり、固定費の支払いさえ終われば、後は利益になるので、限界利益が多いほど利益を生み出しやすいという事になります。
限界利益の多い少ないを判断するために、限界利益率という物を計算します。
限界利益率は、売上高に占める限界利益の割合であり、以下の計算式で出す事ができます。
限界利益 ÷ 売上高 = 限界利益率
限界利益率が何%以上なら良いというのは一概には言えないのですが、競合他社と比較する時には参考になります。
疑問点など
エンジニアは技術職だから不要な知識では?
誰かの指示の下、言われた通りにプログラムを書くだけなら確かに不要な知識です。
しかし、役職が上がるとそういった会話が飛び交う会議に自ずと出るようになりますし、サービスの成長を考えるなら、当然お金周りの知識もあった方が企画担当者や経営層との会話もやりやすくなります。
また、フリーランスになる場合は、自分自身が経営者になる訳で、会社員以上に必要な知識になるのではないかと思います。
財務諸表はどうやって入手すれば良いの?
財務諸表を探すには、大きく2つの方法があります。
上場企業、大手企業の場合
上場企業や、非上場でも大手企業の場合は、自社のコーポレートサイトで財務諸表を公開しているので、そこから入手しましょう。
複数の企業の財務諸表を手軽に見たい場合は、金融庁が運営しているEDINETというサイトを使うと便利です。
また、簡易な情報を見たいだけの場合は、Yahoo!ファイナンスも使い勝手が良いです。
中小企業、スタートアップの場合
中小企業、スタートアップの場合、会社によっては自社のコーポレートサイトで公開している事もありますが、殆どの場合公開していないと思った方が良いです。
その場合は、Googleで「会社名 官報」と検索してみましょう。
株式会社は決算情報を告知する義務があり、官報に掲載している企業もあるのです。
また、最近は官報の決算情報を蓄積してくれているサイトもあるようです。
まとめ
冒頭に書いたように、私自身は簿記の資格を持っている訳でもなく、書籍やネットで手に入れた知識を元に、決算書を見てきましたが、そのお陰で色んなメリットがあったと思っています。
決算書の知識は、一度身に付ければ長く使えますし、エンジニアの活躍の場も広がるので、この記事が少しでも誰かの役に立つと嬉しいです。
記事内に間違い等がありましたら、ぜひコメント等でご指摘下さい。
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